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熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい(その3)

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい(その3)

熟成日本酒のカテゴリー3つ目は、「スペシャルテイスト」。その名の通り、日本酒という言葉がイメージさせる味わいからあえて離れ、独自の世界観で飲む喜びを与えてくれる一群のお酒です。 まずは、樽熟成による美味しさをフルに活かした世界基準のお酒。 熟と燗オリジナルの「古韻 シェリー樽熟成」は、シェリー樽で17年以上熟成され、質の高いウィスキーやブランデーに匹敵する芳醇な香りとうっとりするような甘みを含んだ味わい。しかし、アルコール度数は遥かに低い25度で、優しく飲めるお酒です。最高級のウィスキーが並ぶオーセンティックバーなどでも提供され始めました。 ◇ 古韻 シェリー樽熟成(熟と燗オリジナル) 720ml  価格:12,000円(税込) 商品を見る また、あえて強い個性のお酒を醸し、長期熟成によって、他にない美味しさを完成させるお酒もあります。 熟と燗のダブルブランドシリーズの中で言えば、「AFS Ensemble」や「南部美人 All Koji 2003」。 AFSは高温山廃という独特の製法で、酸の味わいだ強く出るお酒を作り、それを長期熟成することで、丸くなった柑橘のような酸と、カカオ、ナッツ、トースト、ドライフルーツといった複雑なニュアンスを感じさせてくれる香りと味を両立させる唯一無二と言っても良いお酒。その中でも、AFS ensembleは、1970年代醸造の長期熟成酒にごく少量の若いお酒をアセンブラージュした逸品です。 ◇ AFS Ensemble(熟と燗オリジナル) 720ml  価格:16,500円(税込) 商品を見る 一方、「南部美人 All Koji 2003」は、甘みの強いお酒を作った上で、20年以上かけて長期熟成。黄金色で、まろやかな甘みと旨み、そして微かな渋みをバランスさせた希少なお酒です。 ◇ 南部美人...

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい(その3)

熟成日本酒のカテゴリー3つ目は、「スペシャルテイスト」。その名の通り、日本酒という言葉がイメージさせる味わいからあえて離れ、独自の世界観で飲む喜びを与えてくれる一群のお酒です。 まずは、樽熟成による美味しさをフルに活かした世界基準のお酒。 熟と燗オリジナルの「古韻 シェリー樽熟成」は、シェリー樽で17年以上熟成され、質の高いウィスキーやブランデーに匹敵する芳醇な香りとうっとりするような甘みを含んだ味わい。しかし、アルコール度数は遥かに低い25度で、優しく飲めるお酒です。最高級のウィスキーが並ぶオーセンティックバーなどでも提供され始めました。 ◇ 古韻 シェリー樽熟成(熟と燗オリジナル) 720ml  価格:12,000円(税込) 商品を見る また、あえて強い個性のお酒を醸し、長期熟成によって、他にない美味しさを完成させるお酒もあります。 熟と燗のダブルブランドシリーズの中で言えば、「AFS Ensemble」や「南部美人 All Koji 2003」。 AFSは高温山廃という独特の製法で、酸の味わいだ強く出るお酒を作り、それを長期熟成することで、丸くなった柑橘のような酸と、カカオ、ナッツ、トースト、ドライフルーツといった複雑なニュアンスを感じさせてくれる香りと味を両立させる唯一無二と言っても良いお酒。その中でも、AFS ensembleは、1970年代醸造の長期熟成酒にごく少量の若いお酒をアセンブラージュした逸品です。 ◇ AFS Ensemble(熟と燗オリジナル) 720ml  価格:16,500円(税込) 商品を見る 一方、「南部美人 All Koji 2003」は、甘みの強いお酒を作った上で、20年以上かけて長期熟成。黄金色で、まろやかな甘みと旨み、そして微かな渋みをバランスさせた希少なお酒です。 ◇ 南部美人...

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい(その2)

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい(その2)

前回お伝えした「低温貯蔵」「常温貯蔵」に続いて、今回は熟成スパークリングの典型的な味わいについて。 日本酒の中には、新酒で微発泡の刺激を楽しむものや、うすにごり・おりがらみといったにごり酒の一種まで、発泡性のものが色々とあります。 その中でも、熟と燗が扱うのは、シャンパーニュと同様の瓶内2次発酵という手法で作られ、蔵内で寝かすことで魅力を増した熟成スパークリングです。(awa酒という呼称を許されたお酒でもあります。) 瓶詰めした後にも発酵が進み、泡がお酒に溶け込み、その後酵母のおりを取り除いてから更に熟成。心地よい泡立ちを残しつつ、複雑な美味しさを感じさせてくれる魅力あふれるお酒です。 良く飲まれるドライなシャンパーニュとの違いは、日本酒ならではの旨み。熟成によるトーストのような香りが心地よく、そこに控え目な甘みと旨みが相まって、シャンパーニュとはまた違う世界観を感じさせてくれます。 当社オンラインショップでもお求めいただける「七賢スパークリング Expression 2006」は、仕込みの際に2006年に醸造され熟成された大吟醸酒を使用。その後の発酵プロセスでも2種類の酵母を使うことで、力強い泡立ちと複雑な香り・味わいを両立。 ◇ 七賢スパークリング Expression 2006 720ml  価格:22,000円(税込) 商品を見る また、本数が非常に限られていますが、「THE MIZUBASHO PURE 2008」は、細かい泡立ちと熟成によるまろやかさを感じさせてくれる逸品です。(限定販売のため、ご希望があれば、Contactよりお問い合わせください。) ◇ The MIZUBASHO PURE 2008 720ml  価格:33,000円(税込) どちらも、フォアグラのようなしっかりした前菜、あるいは脂の乗ったスモークサーモンのサラダ仕立てなどとも相性が良く、食事とお酒の相乗作用を感じさせてくれます。

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい(その2)

前回お伝えした「低温貯蔵」「常温貯蔵」に続いて、今回は熟成スパークリングの典型的な味わいについて。 日本酒の中には、新酒で微発泡の刺激を楽しむものや、うすにごり・おりがらみといったにごり酒の一種まで、発泡性のものが色々とあります。 その中でも、熟と燗が扱うのは、シャンパーニュと同様の瓶内2次発酵という手法で作られ、蔵内で寝かすことで魅力を増した熟成スパークリングです。(awa酒という呼称を許されたお酒でもあります。) 瓶詰めした後にも発酵が進み、泡がお酒に溶け込み、その後酵母のおりを取り除いてから更に熟成。心地よい泡立ちを残しつつ、複雑な美味しさを感じさせてくれる魅力あふれるお酒です。 良く飲まれるドライなシャンパーニュとの違いは、日本酒ならではの旨み。熟成によるトーストのような香りが心地よく、そこに控え目な甘みと旨みが相まって、シャンパーニュとはまた違う世界観を感じさせてくれます。 当社オンラインショップでもお求めいただける「七賢スパークリング Expression 2006」は、仕込みの際に2006年に醸造され熟成された大吟醸酒を使用。その後の発酵プロセスでも2種類の酵母を使うことで、力強い泡立ちと複雑な香り・味わいを両立。 ◇ 七賢スパークリング Expression 2006 720ml  価格:22,000円(税込) 商品を見る また、本数が非常に限られていますが、「THE MIZUBASHO PURE 2008」は、細かい泡立ちと熟成によるまろやかさを感じさせてくれる逸品です。(限定販売のため、ご希望があれば、Contactよりお問い合わせください。) ◇ The MIZUBASHO PURE 2008 720ml  価格:33,000円(税込) どちらも、フォアグラのようなしっかりした前菜、あるいは脂の乗ったスモークサーモンのサラダ仕立てなどとも相性が良く、食事とお酒の相乗作用を感じさせてくれます。

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい

熟成日本酒をお選びいただくときに、まず手助けとなるのは、カテゴリーごとの典型的な味わいの違いです。 熟と燗では熟成酒を、熟成スパークリング、低温貯蔵、常温貯蔵、スペシャルテイストの4つのカテゴリーにわけ、常温貯蔵のうち、特にお燗に向いたものを「燗好適酒」として表示しています。 今回はまず、低温貯蔵と常温貯蔵の典型的な味わいの違いから。 その名の通り、低温貯蔵は10度以下で熟成したお酒で、その多くは、吟醸・大吟醸という「お米をより多く削った」日本酒です。 蔵元では、削りを多くする場合は、骨格が細めの、いわゆる「綺麗なお酒」を狙った酒質設計となるのが通例です。この「綺麗なお酒」を低温で熟成させることで、新酒の少し荒々しさを感じさせる部分を丸くさせ、「綺麗で丸い」お酒となります。 色合いも淡く、美味しい新酒にまろやかさを加えた感じが、典型的な味わい。 ごく稀に、熟成によって、複雑な味わいが層を成すようなものもあります。(当社オリジナルの「天寿 純米吟醸 1997」がその代表例) ◇ 天寿 純米吟醸 1997(熟と燗オリジナル) 720ml  価格:33,000円(税込) 商品を見る   一方、常温貯蔵は蔵内や貯蔵施設の中で常温で熟成されたお酒で、その多くは15−20度強の環境下で貯蔵されます。 酒質の設計も、あまり削り過ぎず、米に含まれるアミノ酸や発酵によって生成される様々な有機酸による複雑な味わいがあります。 アミノ酸と糖によるメイラード反応によって、美しい黄金色になるに仕上がっているお酒も多く、香り、味わいの複雑性が魅力です。 この複雑性ゆえに、フレンチやイタリアンなどとも合わせて、より食事の楽しみを高めてくれるお酒がほとんど。 筆者の個人的には、焼いた鴨と「達磨正宗 Over 5 Years(熟と燗オリジナル)」の組み合わせなど、テッパンだと感じます。 ◇ 達磨正宗 Over 5 Years(熟と燗オリジナル)...

熟成日本酒:カテゴリーごとの典型的味わい

熟成日本酒をお選びいただくときに、まず手助けとなるのは、カテゴリーごとの典型的な味わいの違いです。 熟と燗では熟成酒を、熟成スパークリング、低温貯蔵、常温貯蔵、スペシャルテイストの4つのカテゴリーにわけ、常温貯蔵のうち、特にお燗に向いたものを「燗好適酒」として表示しています。 今回はまず、低温貯蔵と常温貯蔵の典型的な味わいの違いから。 その名の通り、低温貯蔵は10度以下で熟成したお酒で、その多くは、吟醸・大吟醸という「お米をより多く削った」日本酒です。 蔵元では、削りを多くする場合は、骨格が細めの、いわゆる「綺麗なお酒」を狙った酒質設計となるのが通例です。この「綺麗なお酒」を低温で熟成させることで、新酒の少し荒々しさを感じさせる部分を丸くさせ、「綺麗で丸い」お酒となります。 色合いも淡く、美味しい新酒にまろやかさを加えた感じが、典型的な味わい。 ごく稀に、熟成によって、複雑な味わいが層を成すようなものもあります。(当社オリジナルの「天寿 純米吟醸 1997」がその代表例) ◇ 天寿 純米吟醸 1997(熟と燗オリジナル) 720ml  価格:33,000円(税込) 商品を見る   一方、常温貯蔵は蔵内や貯蔵施設の中で常温で熟成されたお酒で、その多くは15−20度強の環境下で貯蔵されます。 酒質の設計も、あまり削り過ぎず、米に含まれるアミノ酸や発酵によって生成される様々な有機酸による複雑な味わいがあります。 アミノ酸と糖によるメイラード反応によって、美しい黄金色になるに仕上がっているお酒も多く、香り、味わいの複雑性が魅力です。 この複雑性ゆえに、フレンチやイタリアンなどとも合わせて、より食事の楽しみを高めてくれるお酒がほとんど。 筆者の個人的には、焼いた鴨と「達磨正宗 Over 5 Years(熟と燗オリジナル)」の組み合わせなど、テッパンだと感じます。 ◇ 達磨正宗 Over 5 Years(熟と燗オリジナル)...

熟と燗ダブルブランド熟成酒シリーズ

熟と燗ダブルブランド熟成酒シリーズ

いよいよ新年度。東京の桜は、ちょうど月を跨いで満開となりました。この一年、熟と燗が取り組んできたのは、ダブルブランドの充実でした。蔵元のブランドに加えて、熟と燗のブランドも表示したオリジナル熟成酒のシリーズ。おかげさまで、9銘柄(2025年4月15日時点)を数えるまでになりました。   ワインビジネスの黎明期、ロンドンのワイン商たちの重要な仕事は「品質の高いワインを選び抜き、それを自らのブランドを賭けて保証する」ことでした。どの造り手が優れているか、どの樽はより品質が高いか、を判断することが彼らの付加価値だったのです。   今再び黎明期を迎えた熟成日本酒の世界でも、同様に「品質の高い熟成酒を選び抜き、自らのブランドを賭けて保証する」役割が必要。そう信じて、優れた造り手のブランドと同時に「熟と燗」のブランドも表示させていただくダブルブランドのシリーズを登場させました。   長い年月を経たお酒だけに、飲む側の方々がどれを選べば良いかを迷われる場面に数多く遭遇してきました。熟と燗のダブルブランドなら、と安心してお選びいただけるように、そして優れた造り手のブランドがより一層高まっていくように。そういう思いを込めて、作ったシリーズです。   今では、桜の代名詞のようになったソメイヨシノ。元々は、江戸時代、今の駒込近辺にあった染井村の樹木商たちが、全国に広めていったと言われています。私たちも熟成日本酒が津々浦々に(再度)広まっていくように、熟と燗というブランドも冠したダブルブランドシリーズを、これからも充実させて参ります。

熟と燗ダブルブランド熟成酒シリーズ

いよいよ新年度。東京の桜は、ちょうど月を跨いで満開となりました。この一年、熟と燗が取り組んできたのは、ダブルブランドの充実でした。蔵元のブランドに加えて、熟と燗のブランドも表示したオリジナル熟成酒のシリーズ。おかげさまで、9銘柄(2025年4月15日時点)を数えるまでになりました。   ワインビジネスの黎明期、ロンドンのワイン商たちの重要な仕事は「品質の高いワインを選び抜き、それを自らのブランドを賭けて保証する」ことでした。どの造り手が優れているか、どの樽はより品質が高いか、を判断することが彼らの付加価値だったのです。   今再び黎明期を迎えた熟成日本酒の世界でも、同様に「品質の高い熟成酒を選び抜き、自らのブランドを賭けて保証する」役割が必要。そう信じて、優れた造り手のブランドと同時に「熟と燗」のブランドも表示させていただくダブルブランドのシリーズを登場させました。   長い年月を経たお酒だけに、飲む側の方々がどれを選べば良いかを迷われる場面に数多く遭遇してきました。熟と燗のダブルブランドなら、と安心してお選びいただけるように、そして優れた造り手のブランドがより一層高まっていくように。そういう思いを込めて、作ったシリーズです。   今では、桜の代名詞のようになったソメイヨシノ。元々は、江戸時代、今の駒込近辺にあった染井村の樹木商たちが、全国に広めていったと言われています。私たちも熟成日本酒が津々浦々に(再度)広まっていくように、熟と燗というブランドも冠したダブルブランドシリーズを、これからも充実させて参ります。

評価の軸・基準点を持つこと

評価の軸・基準点を持つこと

まもなく新年度。新入生や新入社員の初々しい姿を目にする機会が増える季節ですね。担当の御立が、最初に勤めたのは航空会社でした。初年度は空港内を走り回る日々で、気がつくと足腰が鍛え直されていたのを思い出します。次に配属された先は客室乗務員の訓練センターで、毎日機内からの脱出訓練やら肉の焼き方のトレーニングに追われることになりました。 機内でお出しするために、ワインについても学ばせてもらいました。その中で気付かされたのが、自分の「軸」あるいは「基準点」を持つことの重要性です。味や香りという、どこか捉えどころのないものは、記憶に残すのが存外難しい。また、教科書を読んで知識を積み重ねるだけでは、どういうワインか判断する能力も身につきません。ところが、数種類のワインを飲み重ね、そのワインだけをはっきり記憶に留める。そして、それを「軸」にして、新しいワインと比較できるようになると、急にワインの世界での視界が広がっていくのです。私の場合、ある大手ネゴシアンもののPouilly FuisseやGevrey Chambertinが比較の基準点になり、他のシャルドネやピノノワールがどういう立ち位置にあるか、だんだん見えてくる、そんな感覚です。そのうちに、自分の好きなものが表現できるようになり、さらに様々なワインの味の特徴や価格の妥当性といったことが見えるようになってきます。 実は、熟成日本酒の世界もまったく同じ。存分に楽しんでいただく早道は、「軸」となるお酒を味わい、記憶にとどめていただくことだと思います。今回は、そんな軸・基準点になるようなお酒を紹介させていただきます。 食中酒として楽しめる熟成酒には、大きく2つの流れがあります。一つが、比較的低温(10度以下)で熟成させ、複雑さを纏わせるもの。旨みが乗っていても、甘い感じにはならないものが主流です。その代表の一つが、天寿大古酒。吟醸酒を3年以上低温貯蔵したお酒で、今回のものは2018年醸造。 古酒大吟醸 天寿 3年以上(2018醸造) ◇ 古酒大吟醸 天寿 3年以上(2018醸造)  価格:720ml  5,800円(税込) 商品を見る   もう一つは、最初から熟成感が出やすい酒質を設計し、常温(15度前後が多いです)で熟成させ、カラメルを思わせる熟成香と味わいを出していくもの。あまりお米を削らない、純米酒が中心です。この流れの基準となりえるお酒が、達磨正宗3年。3年以上常温熟成させた原酒を複数ブレンドし、素晴らしいバランスに作り上げています。   達磨正宗 熟成3年   ◇達磨正宗 熟成3年  価格:720ml  2,350円(税込) 商品を見る   ご自身の「軸」「基準点」を作ってみても良いな、と思われたら、ぜひお試しください。  

評価の軸・基準点を持つこと

まもなく新年度。新入生や新入社員の初々しい姿を目にする機会が増える季節ですね。担当の御立が、最初に勤めたのは航空会社でした。初年度は空港内を走り回る日々で、気がつくと足腰が鍛え直されていたのを思い出します。次に配属された先は客室乗務員の訓練センターで、毎日機内からの脱出訓練やら肉の焼き方のトレーニングに追われることになりました。 機内でお出しするために、ワインについても学ばせてもらいました。その中で気付かされたのが、自分の「軸」あるいは「基準点」を持つことの重要性です。味や香りという、どこか捉えどころのないものは、記憶に残すのが存外難しい。また、教科書を読んで知識を積み重ねるだけでは、どういうワインか判断する能力も身につきません。ところが、数種類のワインを飲み重ね、そのワインだけをはっきり記憶に留める。そして、それを「軸」にして、新しいワインと比較できるようになると、急にワインの世界での視界が広がっていくのです。私の場合、ある大手ネゴシアンもののPouilly FuisseやGevrey Chambertinが比較の基準点になり、他のシャルドネやピノノワールがどういう立ち位置にあるか、だんだん見えてくる、そんな感覚です。そのうちに、自分の好きなものが表現できるようになり、さらに様々なワインの味の特徴や価格の妥当性といったことが見えるようになってきます。 実は、熟成日本酒の世界もまったく同じ。存分に楽しんでいただく早道は、「軸」となるお酒を味わい、記憶にとどめていただくことだと思います。今回は、そんな軸・基準点になるようなお酒を紹介させていただきます。 食中酒として楽しめる熟成酒には、大きく2つの流れがあります。一つが、比較的低温(10度以下)で熟成させ、複雑さを纏わせるもの。旨みが乗っていても、甘い感じにはならないものが主流です。その代表の一つが、天寿大古酒。吟醸酒を3年以上低温貯蔵したお酒で、今回のものは2018年醸造。 古酒大吟醸 天寿 3年以上(2018醸造) ◇ 古酒大吟醸 天寿 3年以上(2018醸造)  価格:720ml  5,800円(税込) 商品を見る   もう一つは、最初から熟成感が出やすい酒質を設計し、常温(15度前後が多いです)で熟成させ、カラメルを思わせる熟成香と味わいを出していくもの。あまりお米を削らない、純米酒が中心です。この流れの基準となりえるお酒が、達磨正宗3年。3年以上常温熟成させた原酒を複数ブレンドし、素晴らしいバランスに作り上げています。   達磨正宗 熟成3年   ◇達磨正宗 熟成3年  価格:720ml  2,350円(税込) 商品を見る   ご自身の「軸」「基準点」を作ってみても良いな、と思われたら、ぜひお試しください。  

お酒の魅力を引き出す酒器

お酒の魅力を引き出す酒器

節分を過ぎ、旧暦でも新たな年を迎えることとなりました。 気持ちも新たに、皆様とご一緒に熟成日本酒の楽しみを広げていきたいと思っております。   さて、お酒の喜び、楽しみというのは、古くから詩歌のテーマになってきました。 万葉集の中にもお酒についての歌があり、中でも大伴旅人の「酒を讃(ほ)むる歌」十三首が良く知られています。 私が好きなのは、その最初の一首です。   験(しるし)なき ものを思はずは 一杯(ひとつき)の 濁れる酒を 飲むべくあるらし   意訳させていただくと、 「答えの出ないような事柄をあれこれと考えていないで  一杯の濁酒を飲む方がよほどいい」 という感じでしょうか。 下手な考え休むに似たり、ということに留まらず、まずはお酒を飲んでみるのがよかろう、とお酒を讃える方向に一歩踏み込んだ歌だと感じます。 取りようによっては、お酒を飲む理由をまた一つ見つけた、というふうにも取れますね。   さて、この一杯(ひとつき)、どんな酒盃だったのでしょうか。 お酒の味わいは、酒器で大きく変わります。 旅人は、どんな盃で濁酒を飲んでいたのか、気になるところです。   熟成日本酒の場合、常温でグラスで飲んでいただいたり、お燗をつけて、お気に入りの盃で飲んでいただくことで、美味しさが増す銘柄が数多くあります。 このため、熟と燗の店舗内バーでは、特別に作っていただいた白磁の盃で、熟成酒ならではの色合いと香り、味わいを楽しんでいただいています。 お客様から、「これは買えないの」というご質問をいただくことも多く、今回、追加で同じものを作家さんに焼いていただき、オンラインで販売することになりました。   内田 智裕さんの手になる白磁は、師事された黒田泰蔵氏同様、いわく言い難い持ちばかりの良さ、口当たりの心地よさを感じさせる「お酒の魅力を引き出す」素敵な盃です。 この機会にぜひお試しください。   内田智裕作...

お酒の魅力を引き出す酒器

節分を過ぎ、旧暦でも新たな年を迎えることとなりました。 気持ちも新たに、皆様とご一緒に熟成日本酒の楽しみを広げていきたいと思っております。   さて、お酒の喜び、楽しみというのは、古くから詩歌のテーマになってきました。 万葉集の中にもお酒についての歌があり、中でも大伴旅人の「酒を讃(ほ)むる歌」十三首が良く知られています。 私が好きなのは、その最初の一首です。   験(しるし)なき ものを思はずは 一杯(ひとつき)の 濁れる酒を 飲むべくあるらし   意訳させていただくと、 「答えの出ないような事柄をあれこれと考えていないで  一杯の濁酒を飲む方がよほどいい」 という感じでしょうか。 下手な考え休むに似たり、ということに留まらず、まずはお酒を飲んでみるのがよかろう、とお酒を讃える方向に一歩踏み込んだ歌だと感じます。 取りようによっては、お酒を飲む理由をまた一つ見つけた、というふうにも取れますね。   さて、この一杯(ひとつき)、どんな酒盃だったのでしょうか。 お酒の味わいは、酒器で大きく変わります。 旅人は、どんな盃で濁酒を飲んでいたのか、気になるところです。   熟成日本酒の場合、常温でグラスで飲んでいただいたり、お燗をつけて、お気に入りの盃で飲んでいただくことで、美味しさが増す銘柄が数多くあります。 このため、熟と燗の店舗内バーでは、特別に作っていただいた白磁の盃で、熟成酒ならではの色合いと香り、味わいを楽しんでいただいています。 お客様から、「これは買えないの」というご質問をいただくことも多く、今回、追加で同じものを作家さんに焼いていただき、オンラインで販売することになりました。   内田 智裕さんの手になる白磁は、師事された黒田泰蔵氏同様、いわく言い難い持ちばかりの良さ、口当たりの心地よさを感じさせる「お酒の魅力を引き出す」素敵な盃です。 この機会にぜひお試しください。   内田智裕作...